北区立図書館70周年記念講演 出席

 先日の東京都北区ニュースを中央図書館で手に取り、元NHKアナウンサーの山根基世さんの講演があると聞き、早速応募。当選したのでいってきました。50名程度の出席者プラス中継された部屋もあり、おもった以上に応募があったらしい。
 さてイベントのほうは『もう一度考えたいことばの力』と題しての講演で、読書とことばについて山根さんが考えていらっしゃる、あるいは、実際に"ことばの杜"でやっていらっしゃることなどのお話を聞くことができました。
 こういった講演、わたしはよく行くほうでしょう。他の人たちにくらべると。昔からよく応募していってましたねえ。そういう場に出向くことがまず自分の知の幅を広げるひとつの手段とおもっています。若い時はどうしても仕事がらみの講演やセミナーが中心ですが、最近は、まったく違う分野へのこういったイベント、セミナーに出席しています。年齢とともに見えてくるものが変わるし実生活に大変や役にたつことが多くなりました。
 わたしの講演メモから。

キーワード:
 1.井伏 鱒二『山椒魚
 2.雫石とみ『荒野に叫ぶ声』
 3.長谷部日出雄『桜桃とキリスト-もう一つの太宰治伝-』
 4.2010年国民読書年
 5.読解力の低下、自国語の低下
 6.言葉のリズム、詩
 7.言葉と心

1〜3は、山根さんのお話のなかにでてきて数名の方々の 著書です。4は、来年ですが、国民読書年と題しての取り組みがあるらしい。知識人の会合にて、さまざまな日本語の問題について、数々の事故事件からみられる、ことばの伝え方などについて議論した結果、最終的には、本を読めと推奨するのではなく、『本を読みたいと自らが思うような子供を育てたい』ということになった経緯があるらしい。
 確かに、氏曰く、本は自分が読みたいとおもった瞬間からその子供たちの知識の広がりは、おのずとでてくる。大人があれ読めこれ読めと本まで指定する必要性はまったくない上、無意味だと。自らが読みたいと思い願うようになったとき、はじめて湧き出るような知の広がりが始まると。
 そういう子供にするにはどう大人が力を貸せばよいのか・・という視点でとりくんでいる様子でした。また、大人が読みもしないくせに、子供だけに勧めるのは、おかしな話で、良い本とは、有名な人が書いた本とかではないということをもって親は認識すべきだと。取り掛かりはなんでもいい、興味をもった本を手にすること。そこからは、もう本人次第で大きくひろがっていく。その広がりが確信できれば、読解力と想像力がついてくる。そうなると、物事の考え方も、自らの頭で考えることができるようになる。
 今、わたしの職場でも様々な人がいるが、資料を理解できる国語力がないようにおもえて仕方がない。書いてあることはかいてある通りにしか受け取れない。そこから、行間を読むことがまずできない。想像力も読解力も乏しい。その前に、漢字がかけない、読めない、おまけに意味がわからない。もうおてあげですよ。
 5は、本を読む力がないということと。これは訓練しかないとわたしは思います。とにかく読む、読んで理解して、作者がどういう思いでかいたのか、自分ならどうなのか、これを書いた時代はどうだったのだろうか、作者の育った環境などはどうなんだろう。。いったらきりがないほどの想像力が働くはずだ。これを鍛えるのにはやはり本しかない。また、国語力の低下は、読書量にも比例するのではないかと感じます。外国語習得と母国語とは関連性がないように言う人たちも多くいますが、やはり基本となる母国語をお粗末にしては、外国語はムリとわたしは思います。言葉は、文化であり時代とともに流れてゆくものです。言葉の流れ(揺れ)には、そのときそのときの人間が生み出すことばが含まれます。母国語の力は、言語を主としてコミュニケーションを図る人間にとっては大切なのではないかとわたしは思います。
6は、山根氏が中学生のときにはまった太宰治について語られたときに、自分が長いこと疑問に思い解決しなかったことが、3の長谷部(おさべ)氏の本でようやく解決したときの話の中でできた内容です。
 太宰の文学には、幼少のころの叔母が話てくれた津軽弁のリズムとその詩的な部分が太宰文学の根底にあるというお話。体に響いてきたという山根氏のなせ?という問いにうまく答えてくれたのが前述長谷部氏の本だったらしい。
そして、7は、言葉というものはコミュニケーションの一つだといわれているが、『言葉はその人の心から出てくる』と。心を豊かにすれば、おのずとことばの力がでてくる。こころをゆたかにするための"ことば"の教育という点で尽力したいということをはなされていました。

 さすがに元アナウンサーで今は朗読などもされているとのことですが、大変流暢でまろやかな日本語を話される人だとわたしは感じました。ことばは心から自然とでてくるものであるならば、やはり自らの頭で考え、自らがことばを紡ぎだせるようにしてゆかねばなるまいと思う。子供と読書の話もでましたが、心を豊かにしていくためには、本を読むことは私も大賛成であり、想像力を鍛えることにも絶対的に役に立つし、どんな社会にいようとも、貧しい心にはならないとわたしは思います。

 自分なりの言葉で発することがなかなかできない最近の若者たち、あるいは大人たち。自ら生きている時間を有効にそして、豊かにしていく努力をすることが大切だなあと感じます。